上条当麻はスーパーの精肉売場で仁王立ちしていた。
(……質より量か、量より質か。これは難しい問題ですよ!? 質を取りすぎれば俺の食う分が確実にないし、かといって量を取り過ぎてもいつもと同じメニューで残念なクリスマス!!)
ぐおお、と頭を抱えて悩みだした上条を遠巻きにして、他の客はそそくさと精肉売場を後にしていく。どちらにしろ、もう目ぼしい肉は残っていない。なぜならば、このスーパーはそろそろ閉店時間だからだ。クリスマスだからと奮発して美味しいと評判のケーキ屋に並んだらこんな時間になってしまった辺り、自分の計画性のなさを少し反省する上条である。
(う、うぉおおおおおおおおお!!!! えいっ!!)
結局大奮発して骨付きローストチキン(5本1500円)を手にした上条だったが、ケーキに思ったよりもお金が掛かったせいで財布の中身が足りず、銀行までひとっ走りする羽目になった。つまり、
「おーそーいー!! お腹が空いたんだよ、とうま!」
玄関で待ち構えていた腹ペコ猛獣のインデックスに思い切り噛み付かれたことは言うまでもない。


 チキンの骨を4つ程皿の上に重ね、ケーキの銀紙を3枚程ケーキの入っていた箱に放り込んだインデックスは、それでようやく『そこそこ』満足したらしく、食べる速度を緩めた。土御門妹がおすそ分けに持ってきてくれたサラダやスープも粗方インデックスの腹の中に収まっていたのだが、それでも腹八分目くらいであろうことに末恐ろしいものを感じる上条である。インデックスは余ったパンをもぐもぐと食べながら、上条に話しかけてきた。
「そう言えばとうま、日本のクリスマスはプレゼントの習慣ってあるの?」
「!!」
ぎくり、と体を振るわせた上条は青い顔でインデックスから目を逸らしたまま俯いた。
(えぇ、あります。ありますとも――すっかり忘れてましたけど!)
今更ながら、テレビや雑誌で見かけたクリスマスプレゼントにオススメのアクセサリーだの何だのが思い浮かぶ。インデックスが特にそういったものを欲しがった覚えがなかったのでごく普通にスルーしていたのだが、ここに来てそんな話題が出てくるとはクリスマスの魔力恐るべし。上条はギギギッと音がしそうなくらいに不自然な動きで、インデックスの方へ振り返る。
「あ、あのな……インデックス。そういう習慣は確かにあるんだが……その……」
プレゼント用意してないんだ、という一言を言う前に、インデックスが、良かった、と笑う。パンくずを口元につけたままの笑みは、いつも通りのインデックスで、上条は訳が分からず目を白黒させた。
「じゃあ、今日はとうまに甘えるんだよ」
分かってます、という顔をしたインデックスが、上条の肩に頭を預けてくる。いつもあれだけ飲み食いしている癖に、インデックスは肩も腕も華奢と言って良いほど細かった。全くの不意打ちで訪れた『女の子の感触』に上条はどぎまぎする。
(…………そう言えば、)
インデックスは上条を信頼してはいても、甘えてはいなかったことに、今頃気づく。上条にとってインデックスが守るべき者で頼ることがないように、インデックスにとっても上条は守るべき者で甘えるべきものではないのだ。そう考えると、少しだけ寂しかった。
「とうま、」
窓の外の雪を見ながら、インデックスが呟くように上条を呼んだ。ベランダにはインデックスが『引っかかっていた』手摺がある。彼女と出会ってから、まだほんの少ししか経っていないことを、上条は今更思い出す。どこか満たされたような、幸せそうな顔で、インデックスは言った。
「来年もよろしくなんだよ」
「……それは年越しだろ、インデックス」
ほっとため息をついて上条は言う。自分から言うのは大晦日で良い。ずっと、一緒にいるのだから。


-------------------------------------------
クリスマス限定第二話は上インで
たまにはしっとりした感じのインデックスも良いよね!
しかし多分コタツとかに入ってクリスマスなんだろうけど色気ないな……この二人


inserted by FC2 system