打ち止めは涙目で一方通行を見上げていた。
「……ダメってンだよ」
「どうして、ってミサカはミサカは訴えてみる」
「ワガママ言ってンじゃねェよ」
一方通行はため息をつく。
 二人が立ち止まっているのは、アイスクリームの移動販売車の前だった。夏の日差しにやられてしまったのか、打ち止めは頬を膨らませたまま梃子でも動こうとしない。最初は放っておいてすたすた歩き去った一方通行だったが、五分経っても打ち止めが追いついてこなかったので、仕方なく戻ったところだった。
「ミサカはチョコチップとミルク!ってミサカはミサカは実力行使!」
「オイ、コラ」
一方通行が文句を言う前に、店員の手馴れた復唱が聞こえてくる。アイスクリームを掬うのにそんなに時間はかからないらしく、一分もすれば、打ち止めの手に二段重ねになったアイスクリームが握られていた。店員に値段を言われた一方通行は苦々しい顔をしながら代金を支払う。もちろん、打ち止めにお金を出す様子はない。
「あれ、あなたは食べないの、ってミサカはミサカは尋ねてみる」
少し先のベンチに座って待っていた打ち止めが、近づいてきた一方通行を見上げて聞いてきた。既にアイスクリームのうち、上に重ねられたチョコチップを食べ始めていたらしく、口元がチョコレート色に染まっている。
「そのうちわかンだろ」
微妙にズレた一方通行の返答に、打ち止めは首を傾げた。

 十分ほどして、打ち止めはさっきの一方通行の答えを理解したらしかった。一生懸命アイスクリームを食べている打ち止めだったが、小さい口が災いしてか、なかなかアイスクリームは減らない。一方通行は呆れの半分混じった顔で頬杖をつきながら言った。
「気温とオマエの食べる速度考えてみろ。二つ頼んだら溶けるに決まってンだろォが」
「わ、わわっ、そう言われても困る!ってミサカはミサカは、、落ちちゃう!」
だが、溶けかけたアイスクリームに騒いでいた打ち止めの言葉は次の瞬間には止まっていた。
 平然とした顔で、一方通行は手で口元を拭った。打ち止めに買ってやったものなので、これ以上食べ進める気にもならない。
「か、顔近いよ、ってミサカはミサカは……」
「ナニ赤くなってンだよ、さっさと食え」
一方通行は促す。大きく一方通行の歯型がついたアイスクリームに、打ち止めは躊躇いがちに口をつけた。

 ――それが間接キスだ、ということに気づいて一方通行が愕然とするのは、また別の話。


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取り合えず好きなカップリングを1つのお題で書いてみようの巻その2
天然で女殺しな一方さんも悪くないと思うぜ


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