(…………三つ、四つ、五つ、)
月詠小萌は指を折る。そしてそれが端の指まで到達すると、ため息を吐いた。
(……はぁ、結構ありますね)
そこまで考えてしまってから、小萌はぶんぶん首を振って頭の中で思い浮かべた長身を消そうとする。小萌が出会ったあの少年は随分と大人びて見えたが、それでも年下であることは間違いないだろう。向こうの人は結構年を取っているように見える、といわれるし。小萌は再び考え込む。あの少年が、仮にもう少し年下だった場合――

 周りも目に入らずにうぅ、と唸っている小萌に声をかけかねた土御門は、傍らの青髪ピアスに話をふった。
「にゃー、ありゃどうしたのかにゃー」
視線の先の小萌は、顔を赤くしたり青くしたり、指を折ったり開いたり、唸ったりぽうっとなったり、取り合えず色々と忙しい。手元に教科書が置かれているところを見ると、恐らく仕事中だったのだろうが、さっきから小萌はペンを放り出したままだ。真面目な小萌には珍しいその状況に、土御門は首を傾げる。隣で考え込んでいた青髪ピアスは、何かに思い立ったらしく、はっと顔を上げた。
「あ、あれは……恋の悩みに違いあらへん!」
「こ、恋ッ?!」
がーん、と驚く土御門。だが言われてみれば、最近の小萌の心ここにあらずな様子や、急に考え込むところは、なるほど恋の病と考えられる気もする。土御門はもう一度職員室の中の小萌の様子を伺った。彼女は相変わらずのぼうっとした表情だ。
「な、納得できる気もするにゃー……」
言うと、土御門は小萌の傍へ駆け寄った。いち、にー、と数を数えるのに夢中でこっちに気づかない小萌の耳元に、土御門は囁く。
「カップルの身長差は20センチくらいが良いらしいぜよ」
「…………え、えぇえ、ぜ、全然足りませんよ!?」
叫んだ後、小萌は青くなってまた指を折り直し――かけたところで、ようやく土御門に気づいたらしい。あわあわと慌てた様子で小萌はぶんぶん腕を振った。
「あ、あの! ……土御門ちゃん、これは……」
「え、俺? やっぱりこの俺と付き合おうって話ですやん?」
そこに割り込む青髪ピアス。

 ――それからしばらく、ことあるごとに頑張って牛乳を飲む小萌の姿が見られたとか見られなかったとか。



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取り合えず好きなカップリングを1つのお題で書いてみようの巻その2
ステこもってどうしても一緒の空間に出てきてくれません…


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