上条当麻はインデックスに絵本を差し出した。
「? ご飯は、とうま?」
「……言うに事欠いて最初がそれか! いいか、インデックス。今は1時で、ご飯はさっき食べたばっかだろ?」
「でもお腹が空いたんだよ、とうま。テーブルの前に座らせたからてっきりご飯だと思ったのに!」
ぐぅ、とお腹を鳴らせたインデックスはぺたり、とテーブルに突っ伏す。ちなみに昼ごはんは12時に食べたばかりで、しかもインデックスは上条の3倍くらいの量を食べていたはずなのだが。
 上条はインデックスに絵本を差し出したポーズのまま辛抱強く待っていたが、インデックスには一向に絵本を受け取る気配がない。
「……くぅっ、上条さんは悲しい! お前は何て人の心が分からない子なんだ!」
「? 意味が分からないんだよ、とうま」
ぐるり、と顔だけを上条の方に向けると、インデックスはやる気のなさそうな顔で上条と絵本を見比べた。
「む、お菓子の絵本」
少しだけ興味が湧いたらしく、インデックスは絵本の方に手を伸ばす。どうやら選んだ絵本はこれで正解だったらしい。上条は胸を撫で下ろすと、絵本に目を通し始めたインデックスの横に胡坐をかいて座る。
「……ぐりとぐら、息の長いシリーズ物の絵本だね」
どうやらどこかで知識を得る機会があったらしい。一度見たものは忘れないインデックスは、すぐにすらすらと絵本の概要について語り始める。上条は頬杖をつきつつ、インデックスの話に適当に頷いた。
「…………で、そこで……だから、この作品は記念すべき一作目になるんだよ」
一通り説明を終えて満足したのか、インデックスはようやくページを捲くり始めた。ことこういう時だけは真剣な表情をするインデックスである。それはどんな本でもきちんと読む、『インデックス』としての性格のせいなのだろうが。
(ふふっ……ふふふ、かかったな、インデックス!)
その様子を見て、上条は邪悪な笑みを浮かべた。最近万年金欠で財布に悲鳴を上げさせている上条が、何の考えもなしに絵本など買ってくるはずがない。もちろんちゃんと意図があってのことだった――すなわち、
(この絵本の根底に流れる考えは、『皆でご飯を分け合って食べる楽しさ』だッ!! ご飯を独り占めすることに何ら喜びはないんだ、インデックス!)
上条は流し台の上に置きっぱなしにしている食事済みの食器を見ながら拳を振るわせた。右側に置かれたインデックスが使った皿と、左側に置かれた上条の皿の高さに倍近く差がある。もちろん、低い方が家主である上条の皿だ。それに釈然としないものを感じなくなったのは、いつ頃からだったろう。
「とうま、とうま、」
考え込んでいると、いつの間にか絵本を読み終わったらしいインデックスが、つんつんと上条の腕を突付いていた。上条は振り返ってインデックスが絵本を閉じているのを確認する。だが、感想を聞こうとした上条が口を開く前に、
「フライパンいっぱいのおいしいホットケーキが食べたいんだよ、とうま!」
きらきらした目でインデックスが彼を見上げていた。

 ――もちろん、大量のホットケーキが全てインデックスのお腹に収まったのは言うまでもない。


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取り合えず好きなカップリングを1つのお題で書いてみようの巻その2
そろそろ上条さんはインデックスさん(の食欲)に愛想を尽かしても良いような…


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