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日記ネタ拾い上げ、新しいのなくてスイマセン…
分かりやすく言うと小ネタ、オチ無し、超短文が集まってるんだよ!!
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【ひと足遅れのホワイトデー】(110316)

「はー、寒いどすなぁ、ってミサカはミサカはさり気無く世間話を始めてみたり」
「あァ?」
「ぶるぶるぶる、ってミサカはミサカはわざとらしく震えてみる」
「…………」
「ちらり、ってミサカはミサカはアナタの言葉を待ってみる」
「……なンだよ」
「寒いよねー!ってミサカはミサカは無理矢理同意を得ようとしてみる」
「クソッ、首筋触ンな! 冷てェだろォが!!」
「さ・む・い・よ・ねーーーー?ってミサカはミサカはー」
「耳元で叫ぶな声デケェンだよ! あァ、寒ィな! それがどォした!?」
「ふっふっふー、アナタの為に温めておきました!ってミサカはミサカはアナタの好きな缶コーヒーを取り出してみたり!」

(!? い、いいいいい今ナイムネから缶を取り出しましたよ、とミサカ19090号は動揺しながらも報告します)
(上司に渓谷はないはず……何処で温めていたのでしょう、とミサカ10501号は冷静に考えます)

「あったかい?ってミサカはミサカは……わぷっ!」
「…………」
「レディに顔面キャッチさせるなんてアナタって本当にデリカシーがな……あ、手袋!ってミサカはミサカは季節外れのアナタのプレゼントに歓声を上げてみる!」
「ア、」
「? あ?」
「…………温っためてたワケじゃねェぞ、」
「! ……ふ、」
「オイ、笑うンじゃねェ」

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【君のこと、好きなんだ】(110314)

 写真を一枚取り出して、ぼんやりと眺める。相当昔の写真で、アホ毛の立った脳天気な子供と不機嫌そうに眉を寄せた自分が映っている。そう言えばこの頃の彼女は髪が短かったな、と思い出し――随分長い付き合いになったものだ、と一方通行は苦笑した。


 目を覚ましたら昼だった。寝過ごしてしまったことを訝しく思い、それから一方通行は独りごちた。そう言えば今日、彼女は朝から出かけると言っていた。ベッドサイドの棚に置きっぱなしにしていたカップを持ち上げて、中身が何も入っていないことに気づいて溜息をつく。覚醒したか怪しい頭のままぺたぺたと裸足でリビングまで行くと、テーブルの上にメモが置いてあるのが見つかった。
『食べてね! アナタのハニーより』
苦し紛れにメモを指で弾く。
 最近型抜きにハマっているらしい彼女は、出してくる食事のあらゆるポイントに型抜きを使ってくる。今日は何を思ったか食パンを型抜きしてしまったらしく、ハートやら星やらが皿の上に散乱していた。ものすごく賑やかな見た目に、チョコレートやホイップクリームの飾り付け。出かける前に置いていくにしては凝りすぎている。
「……何やってンだ、アホ」
一方通行は今は居ない彼女にそう呟いた。


 パンを咥えつつ、皿を片手にソファへ移動する。行儀が悪いと自分の所作そっちのけでガミガミ怒ってくる彼女が今日は居ないので気楽なものだ。足でドアを開けてソファに腰を下ろすと、数枚の写真が散らばっていた。
「……アー、」
昨日は彼女が出かけるのにカメラが必要だと言うので、丁度良い機会だと写真のデータを整理していたのだった。子供の頃から使っていたものなのでデータがいっぱいになってしまっていたのだが、結局アレも残す、コレも残す、という話になり、最後は新しいメモリを買いに出かけてしまった。その際についでだから、と現像した写真をそのままにしていたのをすっかり忘れていた。
 そのままにしておくのも落ち着かないので、一方通行は写真を片付けようと手に取る。数人で撮った賑やかな写真もあれば、二人で撮った静かな写真もある。その全てに共通して自分と彼女が映っていた。
 写真を一枚取り出して、ぼんやりと眺める。相当昔の写真で、アホ毛の立った脳天気な子供と不機嫌そうに眉を寄せた自分が映っている。そう言えばこの頃の彼女は髪が短かったな、と思い出し――随分長い付き合いになったものだ、と一方通行は苦笑した。
「なンつーか、」
写真の中の彼女は昔から無邪気で明るくて、写真の中の自分は昔から不機嫌で無愛想だった。それでも、彼女との距離だけはずっと変わらない。
 写真を更に一枚引き抜く。どういう思い出だったかすぐに思い出せる。一枚、もう一枚。どれを引き抜いても同じだった。不機嫌そうに作った表情を顔に貼り付けて、けれど自分はきっと笑っていたのだ。

 あぁ、多分。ずっと昔から――自分は、彼女のことが。


 ――うとうとしていたようだ。玄関先のガチャガチャいう音で一方通行は目を覚ます。起き上がって寝ぼけ眼のまま玄関まで出向くと、彼女がちょうど靴を脱ぎ終わったらしく上半身を起こすところだった。こっちに気付いたらしい彼女は、嬉しそうな顔で報告してくる。
「ただいまー、ってミサカはミサカはお土産を誇らしく突き出しながら凱旋してみる!」
「…………」
「なぁに?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
「変わんねェなァ、オマエ」
そう一言だけ声を掛けると、一方通行は彼女の髪をくしゃりと掻き混ぜた。

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【それが気になるお年頃】(110312)

@とある夜のミサカネットワーク

『相談相談相談相談そうだーん!ってミサカはミサカはネットワークに居る全員に声を掛けてみる!』
『日本時間ならともかくとして、地球の裏側のミサカたちは睡眠の真っ最中ですよ、とミサカ13577号は寝ぼけ眼を擦ります』
『夜中に叩きこさないでください、とミサカ19090号は若干不機嫌に返答します』
『そちらは同じ日本国内、時差はないのでは、とミサカ10032号はすかさずツッコミを入れます』
『まぁ一旦言い出したら話を聞くまでうるさいのが上司です。どうかしたのですか、とミサカ10039号は親切にも尋ねます』
『あのひとミサカに水着着ろってうるさいの、ってミサカはミサカはぶーぶーしてみたり』
『……これは類まれなるロリコンですね、とミサカ19090号はネットワーク内の個人情報ファイルに修正を加えます』
『この寒い季節に水着を強要してくるのですか、とミサカ10501号は何処へともなく白い目を向けます』

『? 温かいよ? だってお風呂だもん、ってミサカはミサカは不思議に思って返してみたり』

『!!(未だに一緒にお風呂に入っているのですか!?とミサカ10032号は声に出さず驚愕します)』
『!!(な、予想の斜め上ですが突っ込みようがありません、とミサカ14333号はあきれ果てます)』



@とある夜のグループアジト

「……さっきからジュニア雑誌見ながら真剣に悩んでるあのキモイのどうにかしなさいよ」
「ついに犯罪の兆しですかね」
「ストーカーが言っても説得力はないな」
「オイ、聞こえてンぞ外野。何勘違いしてンだ」
「勘違いって……何がどう勘違いなのか説明してみなさいよ」
「あン? ガキの水着がどォいう構造してっか調べてるだけだろォがよ」

「……変態だわ……」
「……変態ですね……」
「……変態だにゃー……」

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【神様のりんご】(110301)

 突然気づいた――それは青天の霹靂、というようなもの。

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「何悩んでるじゃん?」 ヨミカワに聞かれて打ち止めは答える。あの人と一緒に居ると胸が苦しくなって、でも傍に居ないと不安になって。どうしようもなくぐるぐるしてしまう、と。真剣に言ったのに、ヨミカワが笑いを噛み殺しているようだったので、打ち止めは頬を膨らませる。
「ま、そのうち気づくじゃん」
そう言ってヨミカワは笑った。

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 そうだ、ヨミカワは、『そのうち何とかなる』じゃなくて、『そのうち気づく』と言っていた。
 あぁ、気づいてしまえば――何て、他愛がなくて、くすぐったいことなのだろう。

 あの人が首を傾げるのが見えた。
「あァ? どうしたってンだよ、気持ち悪ィ」
多分、笑顔が隠しきれていないからに違いない。引っ込みがつかなくなっているのか、あの人の乱暴に髪をかき混ぜる手はそのままだけれど、視線はどこか逸らされがちで。たったそれだけのことが嬉しくて、この人のことが好きなんだなぁ、と再認識する。
「えへへ、ってミサカはミサカはふにゃふにゃしてみる」
どこかふわふわしたような、落ち着かないような、そんな気分は少しずつ何処かに溶けてしまっていて、次に感じるのはこの人への愛しさだとかそういったもの。いつもの見慣れているはずの姿――どこか不機嫌そうだけれどどこか隙のある横顔を見上げると、ぐしゃり、とあの人の手つきが乱暴になった。
「オシマイだ」
そう言って、あの人は手を離す。それを少し名残惜しく思うのと、少し安心するのと。あの人はこっちに背を向けている。いつもなら思い切り飛びつくところだったけれど、黙って背中を追いかけた。

 それは、神様のりんご。
 気づいてしまえばとても甘くて――もう逃げられない。

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【薄味薄荷】(101201)

ガムでは味がきつすぎて、リップクリームだとひりひりする。
(む、難しい……ってミサカはミサカは困ってみたり)
打ち止めは手元にバラバラと試してみたものを並べた。取り敢えずは口がスースーするものを選べば良いのだと思うけれど、食べ物から化粧品までそれこそ数限りなくあるわけで。打ち止めはネットワークで勧められて買ってしまったものを頑張って分別する。
「……これは美味しくなかったし、こっちもダメだったかも……あ、これは期限が切れてる!ってミサカはミサカは途方に暮れてみたり」
たかがブレスケア、されどブレスケア。自分に合ったものを探すのは大変なものである。
「んー……これは試してない、かな?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」
大袋に入った飴を持ち上げると、打ち止めはパッケージとにらめっこした。買った覚えのないものなのでどこかで貰ったものだと思うのだが、全く思い出せない。試したかどうかすら覚えてないので、打ち止めは中身を一つ取り出して口に含――んで後悔した。
(に、苦……!ってミサカはミサカは……ギブアップ!)
打ち止めは慌てて吐き出す飴を受けるためのティッシュを探す。けれどこういう時に限ってなかなか見つからない。涙目になりながら走り回っていると、背後のドアが開く音がした。振り向くと、ちょうどリビングに入ってくるところだった一方通行と目が合う。
「お前なァ、涙目になってまで好きじゃねェモン食うな」
一方通行が差し出してきたティッシュに飴を吐き出す。痛みでひりひりする唇を気にしながら打ち止めは一方通行を見上げた。呆れ顔をされると、何だか悔しい。けれど何のためにこんな風に頑張ってるんだか――知ってほしいけど知られたくない複雑な乙女心である。
「その……これには深いわけが、ってミサカはミサカは主張してみたり」
「なンだよ、その深いワケってのは」
「く、口寂しいから……?ってミサカはミサカは……えぇと、」
「オイ」
「え?」
かけられた声に顔を上げると、柔らかくその癖少し乱暴に唇が触れた。舌でこじ開けられた口に、甘い塊が差し込まれる。
「そっちの方が甘ェだろォが。食ってろ」
本当に何気ない様子で一方通行は打ち止めの口元を拭う。ほんの一瞬前まで、その位置にあったのは一方通行の唇で。
 口の中に転がり込んできたのは小さな飴だった。舌に残る甘味とすっとした辛味が程良く合わさっている。けれど――これでは本末転倒なわけで。
「…………あ、ああ、あ、あなたはど、どうしてそういうことするかなぁ!?ってミサカはミサカは心の準備ができてなくて若干焦り気味って言うか、あなたそんなに手の早いひとだったっけ?ってミサカはミサカは、」
「減るモンじゃねェだろォが」
遮るような一方通行の言葉に、打ち止めは顔を赤くして俯いた。恥ずかしくて一方通行の顔がまともに見られない。けれど彼の声の調子からするに、きっといつも通りの涼しい顔をしているに違いない。
 と言うか――口移しで飴を渡すなんてどれだけ器用なのだ、彼の舌は。
「……ず、」
「あァ?」
「ずるい……」
動揺の欠片も見せない一方通行に、打ち止めは小さく呟いた。

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【お嬢さんを僕にください!】(101121)

 上条当麻は正座していた。レンガ造りの床は御世辞にも脛に優しいとは言い難く、暴力的なまでの硬さと冷たさを伝えてくる。それでも彼は正座をやめるわけにはいかなかった。
 コツコツと鳴っているのは目の前を歩く男の靴だ。
「…………もう一度聞くぞ、上条当麻」
イライラとした声でくわえタバコの不良神父が言う。その視線はいっそ寒々しいほどに冷え切っていた。
「これは、どういう事態だ……?」
ステイルが指さした先にはインデックスがいた。
 会うのが数年ぶりとは言え、ステイルも神裂も見た目はそんなに変わっていない。それは自分も同じことで、せいぜい着ている服が学生服から私服になった程度だ。おまけに大学デビューしたわけでもないので、私服のチョイスも似たようなもの。総じて前に会った時とそう変わっていないはずである。
 だがインデックスは違った。相変わらずの童顔に華奢な体つきだが、一部分が全く違っていた。食欲旺盛なインデックスがついにその恐ろしいまでの燃費の悪さを克服して太った……なら話は良かったのだが、生憎ながらそうではない――おめでたである。
「……………………まさか、こんなことになるとは……」
神裂が呻くようにしてインデックスのお腹を撫でる。にこにこと笑っているインデックスの表情は――もしかしたら前より少し大人びたかもしれない。そんな彼女の笑みにどう返したら良いのか戸惑った様子で神裂は視線を落とす。
 ステイルはあからさまにそんな二人を視界に入れないようにして上条の方を向く。
「…………上条当麻、お前がどうやって彼女を篭絡したんだか知らないし興味もないね」
「篭絡て……」
突っ込むような上条の言葉を苦虫を噛み潰したような顔で無視したステイルは、上条の頬にタバコを突きつけた。
「だが話せ」
「それ気にしてる! 気にしてるじゃないですか!」
ジジジという音すら聞こえてきそうな至近距離のタバコに上条は冷や汗をかく。
(って言うか灰! 灰落ちますから!)
どこから話そうか、と慌てて頭をフル回転させ始めた上条。だがその耳に、インデックスの焦った声が届く。
「と、当麻は悪くないんだよ! 毎日ご飯食べさせてくれるって言ったから、」
「そんなことを言って手篭めにしたのか……見損なったぞ!」
インデックスのキラーパスで、タバコが頬の3センチ先にぐいっと近づく。
「ちが、インデックスさん! 毎日味噌汁食べさせてやるは古式ゆかしい日本のその、何と言うか決め台詞のひとつでしてね!? っていうか普通なら食べさせてくれって言うところでしてね!?」
「食べさせてくれ……だと? 言うに事欠いて彼女を手篭めにしておきながら食べるなどという表現を使うとは……」
更に1センチ。もはやタバコの発する熱で産毛が焦げそうな距離である。
「ス、ステイル……! 日本には『毎日お前のが食べたい』というプロポーズがあってですね、」
「毎日食べたい……だと!?」
怒りに燃えたステイルが勢い余ってタバコを振りかぶる。それを半泣きになって避けた上条は叫んだ。
「いやーーーーー何でそこで肝心のお味噌汁抜かしてフォローちゃうの!? 何でこんなにこの人話聞かないの!? ふ、不幸だーーーーーー!!!!」

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