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 それは、夏のありふれた思い出。


 上条当麻は財布の薄さに涙を浮かべつつ、インデックスの嬉しそうな声を聞いていた。
「とうま、次はあれが食べたいかも!」
「うぅ……既に戦闘力がゼロの上条さんの財布に対してまだご無体を強いますか……インデックスさんは」
「あーれーがー食ーべーたーいーかーもー!」
黙ってお金を屋台の親父に手渡す上条。数秒後には、千円札が焼きそば2パックに早変わりしていた。こういう屋台は何についてもやたらレートが高い。多分、雰囲気も込みだからだろう。


 二人が来ているのは夏祭りだった。学園都市では夏休みにいくつか夏祭りが開催されているが、二人が出向いたのは比較的こじんまりとした規模のものだ。それは、上条がせめてこのくらいの規模ならインデックスの食欲に対抗できるだろう(主に財布が)と考えたからに他ならないが、結果が無残な敗北だったのは見ての通りである。
「うぅ……こんなんじゃ明日からまたパンの耳生活は確実ですよ!? ……不幸だ……」
さっきからはしゃぎっぱなしのインデックスの後ろで、今後一ヶ月の生活を考えて上条の顔は真っ青だった。帰ったら三毛猫相手に悲しみを分かち合おう、と上条は決心する。悪いのはお前のご主人様、否、お前のご主人様の食欲だよ――そう物思いに浸っていた上条は、はた、と気を取り直してインデックスを追った。上条には彼女に言わなくてはならないことがある。今日の目的は夏祭りだが、夏祭りには屋台の他にも楽しみがあるのだ。
「あのなぁ、インデックス。夏祭りには花火っていう一大イベントがあってだなぁ、」
「あ、かきごーりだよ、とうま」
「もうすぐ始まるから場所取」
「わたあめ、わたあめだよ、とうま。そう言えばデザートがまだだったかも!」
「焼きそばの前に食べてたりんご飴は何だったんだよ、インデックス!」
溜まらず叫んだ上条だったが、インデックスは悪びれない様子で首を傾げた。
「甘いものはべつばら?かも」
「疑問系で言うな!」
結局、花火が終わる頃まで、インデックスの屋台制覇は続いたのだった。

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取り合えず好きなカップリングを1つのお題で書いてみようの巻その4
上条さんとインデックスは何気ない日常をずっと続けてくれると良い


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