鞄の中に入れっぱなしになっていた携帯電話を確かめると、サブディスプレイのランプが点滅していた。慌てて画面を確かめると、着信は全て同じ人物からのものだった。ため息をついて、上条は徐に電話をかける。
「おい、インデックス。どうしたんだよ?」
『…………あー、とうま! とうまなんだよ! ずっと出ないから、私、ケイタイデンワーの使い方間違ってるかと思ったんだよ?』
応えるまでに間があったのは、未だにインデックスが携帯電話に慣れてないからなのだろう。上条は少し苦笑しつつ、で、と続きを促す。とは言え、インデックスが上条に慣れない電話をかけてくるなんて、余程切羽詰っているだろう状況で、彼女をそんな状況に陥らせるものなんてそうそう多くはないわけで。
『お腹がすいたんだよ』
案の定の言葉に、上条はがっくりと肩を落とす。インデックスにとっては、基本的に上条はご飯をくれる人、みたいな感じなわけで、当然ながらそれ以外の用で電話してくるとはなかなか考えにくい……考えにくいが、それでも何だか意気消沈してしまう上条である。
「インデックス、携帯電話で買い物するやり方教えただろ?」
『でも、何度やっても、ぴーって音が鳴ってね、お店のひとに、ちゃーじ?してください、って怖い顔で言われたんだよ?』
上条は思い出す――インデックスの携帯電話のオサイフケータイ機能にチャージをしたのはつい一昨日のことで、しかも入れた額はそう少なくない。何をして使い切ったと言うのだろう? ……考えるまでもない。
『……さっきまではお腹いっぱいだったんだけど、』
いつもより多く食べちゃったんだよ、とインデックスが少し困惑した声で呟くように言うのが聞こえた。
 恐らく予算云々お構いなしに、食べたいだけ食べたに違いない。彼女の食欲を満たそうとすれば、なるほど、あの程度の金額では全く足りないと言えた。
「で、俺にチャージしろって?」
『うーん、それもあるんだけど、とうまはいつ帰ってくるのかな、って』
上条は腕時計を見る。帰りは少し寄り道をして帰ろうか、と思っていたが、この様子だと早めに帰った方が良さそうだ。途中でスーパーによって買出しして行こう。そう、上条は考える。そうすると、家に着くのは1時間後くらいになるはずだ。1時間――インデックスの食欲が暴れださないか、五分五分――いや、七分三分くらいか。もちろん、暴れだす確率の方が高い。
「あー、腹が減ってるんだったら冷蔵庫に入ってるもん勝手に食べててくれよ。えーと、」
冷蔵庫の中に何が残っていたか、上条が思い出そうとしたところで、でも、とインデックスが口を挟んだ。
『とうまがいた方が、ご飯は美味しいんだよ』
「え?」
『うーん、何だか良く分からないんだけど、とうまと一緒に食べないと、あんまり食べた気がしない……のかも』
インデックスは自分でも良く分からない、といった調子で言う。上条は思わず立ち止まった。
「……ん、じゃあ取り合えず早く帰る」
『うん、待ってるね』
インデックスの、いつもよりどこかゆっくりとした声音。

 予定は変更――スーパーには寄らずに帰ろう。
 電話を、このまま続けたいから。


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たまには飯キャラ以外のインデックスさんも
何気に無意識恋心が出来る美味しいキャラだと思います、インデックスさん


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