寝ぼけ眼のまま、ステイルは辺りに手を伸ばす。昨日――否、日付的には今日になってしまったが、ようやく一休みできたところにこの耳障りな着信音。成り行きで上条の部屋に邪魔することになったステイルだったが、早くも後悔し始めていた。家主も、遺憾ながらその居候となってしまっている彼女も、どうやらこのぐらいの音量の妨げ程度では、全く目覚めないらしい。
「…………、」
ステイルは半分以上瞼が落ちた状態で、ベタベタと手当たり次第に辺りを触っていく。と、音源になっていたらしい携帯電話が手に触れた。
(……うる、さい)
ステイルは徐にそれを部屋の隅に放り投げようとして――覚醒を拒否したままの巡りの悪い脳で扱ったせいか、手に触れた携帯電話のボタンを勢いよく押してしまう。
『もしもーし? 先生は怒ってるのですよー』
どこかで聞いたような、子供っぽい間延びした声だった。ステイルは訝しげに思いながらも、何故その感覚が生まれるのか分からず僅かに眉を顰める。
『今回の補講はサボると単位が厳しくなって、留年しちゃうかもしれないのですよー? お休みの日ですから、お寝坊さんしたい気持ちも分かりますけど、先生も学校に来てるのですから、ちゃんと来てくれないと困るのですよー』
「……眠いんですが、」
怒涛のようなその声が一旦途切れたところで、ステイルは掴んだ携帯電話に向かって言う。ホコウだのリュウネンだの、大よそステイルには関係のない世界の言葉――つまり、この携帯電話は上条当麻のものなのだろう。そう言えば、手にした感触はいつもの馴染みのある感触よりも、心持ち小さい気がする。
 ステイルは舌打ちすると、通話を切るために携帯電話を耳に押し当てた。
『眠いのは先生も同じなのですよー、さてはまた夜更かし……って、あれ?』
相手はそこでようやく自分が上条当麻ではないとわかったらしい。
『……? あれ、上条ちゃん……の、電話ですよねー? あれ、あれ……』
「上条当麻は寝てる。僕も眠いから切るよ……」
『あ、ちょっと待ってくださいー?』
返事も聞かずにステイルはそのまま目を瞑った。とにかく昨日も良く働いた。上条当麻に関わるといつもそうだ。まぁ、それでも。日常が昔とガラッと変わったか、と言えばそうでもない。

 昔より少し騒々しくて――少し愛しい、そんな日々なだけだ。

『もしもーし、あの、どなたですかー?』
耳障りだったはずの声は、どこか心地良い。それが何故なのか分からないまま、ステイルは再び眠りについた。


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うちのサイトですていぬと小萌先生がまともに話したのは始めてかも試練
ステイル寝起き悪そうだなぁ……小萌先生大変ですね!(何


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