携帯電話で助けを求められて公園まで来てみても、打ち止めの姿は見当たらなかった。面倒に思いながら探していると、どこからか彼女の声がして。頭上を探す、と言うことに思い至ったのは彼女の声が焦りを含み始めた頃だった。
「こ、こっち! 上! ってミサカはミサカは大声で叫んでみたり!」
少し遠く聞こえる言葉に視線を上げて辺りを見回す。木、木、木、空、街頭、木、木、足。何か変なものが見えた気がして目を凝らすと、少し離れたところで細い足が揺れている。
「……ナニやってンだよクソガキ」
舌打ちをして彼女が登っている木の下まで近づくと、一方通行はため息を付いた。道すがら怒りに興奮した犬とすれ違ったことを思い出す。何となく、事情は分かった。犬に追いかけられて木の上に登ったは良いが降りれなくなったのだろう。一方通行はある意味予想通りで、ある意味予想の斜め上のことをしている打ち止めを呆れ顔でを見上げた。
「べ、別に降りられなくなったわけじゃないんだから!ってミサカはミサカは言い訳してみたり」
一方通行の呆れに、打ち止めは視線を逸らしてごにょごにょと呟く。どうやら自分でも言い訳と分かっているらしい。打ち止めの語尾は消え入るようなもので、その顔にはどちらかというとバツの悪そうな表情が浮かんでいた。
「オマエ……動物好きなンは悪かねェが、慎重に近づけよ」
「……ま、まるで見てたように言われるのが悔しいってミサカはミサカは口を尖らせてみる」
「あァそォ」
わざと無視するようにして木から離れる方向へ歩を進めると、打ち止めは慌てた声を上げる。
「あ、あの……」
「なンだよ」
首に手を当てて視線を逸らす。打ち止めがどんな表情をしているのかは分からないが、上から降ってきたのは彼女にしては珍しくしおらしい声だった。
「た、助けてってミサカはミサカは……その、お願いしてみたり」
「……分かったから足閉じろ」
角度的にスカートの中が見えない位置まで移動した一方通行はそう言い返した。少し呆けた顔をした後、打ち止めは真っ赤になって足を閉じる。
「み、見た……?ってミサカはミサカは恨みがましいジト目であなたを睨んでみる」
「……アー、見てねェよ」
「その間は怪しい!ってミサカはミサカはうぅ……」
別に色気のない子供の下着など見ても何も嬉しいことなどないのだが、当の本人にとっては大きな問題らしい。一方通行は意識的に視界を下にずらしたまま打ち止めの登っている木に近づく。
「オイ、とりあえず」
「や、やだ来ないでってミサカはミサカは、」
思わず上を見そうになると、また悲鳴のような声が上がる。バカバカしく思いながら下を向くと、一方通行は大声で話しかけた。
「あのなァ、ンじゃどォしろってンだよ。このまま帰ンぞクソガキ」
「だ、だって絶対見えちゃ……そうだ!ってミサカはミサカは思いついてみたり!」
「あァ?」
打ち止めのひらめき声に疑問を返すと、良いから、と言うように彼女は笑った。打ち止めはそのまま右手で一方通行を追い払うような仕草をする。
「離れて離れてー、ってミサカはミサカはあなたに呼びかけてみる」
「? どうしようってンだ?」
言われた通り距離をとって顔を上げると、打ち止めが木の上で立ち上がろうとしているのが見えた。嫌な予感がして一方通行は目を見開く。
「せぇーのっ!」
次の瞬間、打ち止めは思いっきりこちらに向かってジャンプしていた。



「……アホか」
打ち止めは聞こえない振りをしているのか返事を返さない。腕の中の彼女は一方通行の首に腕を回していた。受け止めるだけ受け止めたので引っ剥がそうとしたのだが、思ったより強い力でしがみついているらしくなかなか離せない。
「んー、でも飛び降りるのは一瞬だから恥ずかしくないし、あなたも時間かからなくて済むでしょ?ってミサカはミサカはご満悦」
と言うか、どちらにしろ下着は見えてしまっていたのだが、それを言うと話がややこしくなりそうなので取り敢えず黙っておく。とは言え――
「急に飛ぶンじゃねェよ。他に方法考えろ」
「でも受け止めてくれるって信じてたもん!ってミサカはミサカはあ、痛!」
「無駄なことに能力使わせンな」
結局急に飛び降りた打ち止めを受け止めようとして、一方通行は能力を使ってしまっていた。何とか受け止められたものの、ヒヤッとしたのは事実で。両手がふさがっているので懲らしめるために頭に頭をぶつけてやると、ようやく腕の力を緩めた打ち止めは至近距離で笑った。その全く痛がってない素振りに(尤も痛くないように力は加減したのだが)もう一度やってやろうかと思っていると、打ち止めの顔が近づいてくる。気づいた時には、唇に柔らかい感触があった。
「おかえし」
唇を離した彼女はそう言ってはにかんだ。


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スカートの中を見ないもやしに何紳士ぶってんだよと思うと思いますが、
そもそも打ち止めのスカートの中気にしてるところがロリコンなんだよ…と…
…しばらくぶりですが、ゆるゆる更新再開しますよー…


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